山東省では、「餅(=こねた小麦粉を焼いたり蒸したりした食べ物の総称)」はなくてはならない主食で、よくスープ料理や肉を乗せたり包んだり、巻いて食べます。味も非常に美味しいです。例えば、濟南のレストランには天山の軟らかい羊肉がありますが、餅と一緒に食べたり、巻いて食べたりします。濰坊地区の朝天鍋(=山東省の名物料理の1つ)も餅と一緒に食べるなど、山東省のどの街に行っても、煎餅と併せて食べることが好まれています。淄博には独特な地方色を備えた「菜煎餅」があります。このように山東省では「餅」が非常に重要であることが分かりますが、最も有名なものは、やはり泰山頂上の「天街」の定期市にある「泰山煎餅」です。
赤い中国服を着た若い女性が、コンロ(台湾の蟹殻黄【=餅の一種で、蟹の甲羅に似ていることからこの名前がついた】)が焼けるのを見守っています。「T」字型の小さな棒で、とうもろこしを原料とした練り粉をひっくり返し、小さな棒で薄い面餅(平たい円盤状の餅)に仕上げていきます。クレープに非常によく似ていて、薄くパリッとした焦げた黄色の煎餅の形は紙のようで、食べると非常に口当たりがよく、階段を上ってきたばかりの観光客があっという間に元気になる、人気の一品です。
天街の泰山煎餅は有名ですが、山麓の「泰安煎餅」も非常に美味しいです。昔、泰安の男性が妻を娶る際の第1条件は、煎餅を薄く伸ばして焼けることと、靴底をつぎはぎできることで、これができて初めて良い家にお嫁に行くことができたといいます。煎餅は泰安人の朝食で、味噌を塗って美味しい長ネギを挟んだり、少し工夫を加えて豆腐のでんぶや豆、野菜、ダイコンなどを加えても、非常に美味しくなります。