北京のデパート?新世界百貨の崇文門店の前にある広場「民俗一条街」は春節(旧正月、今年は2月8日)が終わった今も、ランタンが風に揺れ、商売繁盛を祈る歌声が響き、外にいる民間アーティストもそれに合わせて声を上げるなど、春節ムードいっぱいだった。北京日報が報じた。
しかし、オープンした昨年にここに店を移したという麻成貴さんにとって、外のにぎやかさが逆にむなしさを倍増させていた。麻さんによると、春節に合わせた7連休中のうち、2日はほぼ開店休業状態。店内の壁3面に掛けてある年画(春節に家の門や扉、壁等に飾る版画)や切り紙細工、ランタン、ガラスケースに入っている北京伝統の玩具?兎児爺などは根が生えかけているという。ここ数年、北京伝統のお正月グッズを販売しているという麻さんだが、「数年前はまだよかったが、今年は本当に売れない」と肩を落とす。
「民芸品を売っているのは、自分が好きであるのと、昔を懐かしむ今の時代に合っていると思ったから」と麻さん。青春をテーマにした映画が大ヒットしているのなら、多くの人の子供の頃の思い出である民芸品も必ず売れると見積もったのだ。当初、見込み通り商売は繁盛し、過去2年は春節期間中に数千元の利益を出した。昨年は最も多い日で年画十数枚が売れ、売り上げは平日の数倍になった。ところが、そんな状況も束の間。今年の春節はこの商売を始めて最も不調。「信じてもらえないかもしれないが、10日で売れた年画は7、8枚だけ」とため息をつく。
しかし、伝統文化の詰まったこれらお正月グッズに、多くの人は見向きもしなくなったのかと言えばそうでもない。
今年の春節期間中、中国の有名芸術品企業「雅昌」傘下の生活サービスプラットホーム?ARTPLUSは、「西遊記」をテーマにした「猴王無忌」という名前の伝統ガウンを発売。伝統と現代の要素を融合させた年越しグッズで、約1000元(約1万7千円)もするにかかわらず、ネット上で売り切れ寸前の人気となっている。「猴王無忌」は、中央美術学院(北京)のアーティスト?鄔建安さんが「猴王無忌」、「六耳獼猴」、「搬山猴」の3作品を原案とし、デザイナーの手で仕上げられたガウンだ。
この伝統文化と現代ファッションを融合させたお正月グッズは、海外でも評判となった。一週間前、鄔さんは米国ニューヨークのメトロポリタン美術館で「孫悟空を救出」と題する春節イベントを開催。「猴王無忌」は、子供たちに「かわいい」と人気で、柄の意味は何のかと興味津津だったという。1千人以上の子供が積極的にイベントに参加し、仏像の手のひらを紙に描き、「五行山」に閉じ込められている美猴王のカバーの上に張り、自由にしてあげた。すると、「多くの子供が、孫悟空が五行山に500年間閉じこめられたというのがどういう意味かやっと分かった」と話していたという。
北京の観光スポット?故宮がオンラインショップ「淘宝」に出しているショップの微信(WeChat)の公式アカウントも同じく伝統民俗をテーマにした商品を打ち出した。例えば、ウインクやピースサインができる清の第5代皇帝?雍正帝、ウルトラマンが怪物をやっつける時のポーズをしている清の第8代皇帝?道光帝など、かわいいグッズが人気になり、故宮の伝統資源が新たな活路を見付ける形となっている。現時点で、故宮博物院が研究?開発したカルチャーグッズは7000種類以上あり、昨年上半期だけで、その売り上げが7億元(約119億円)に上った。
新たな活路を必要としている伝統手芸
北京民俗専門家の高巍氏は、「民芸品がこれまで長く伝わり、歴史で生き残ってきたのは、庶民に歓迎されてきたから。ただ、今の時代とは少し隔たりがある。その隔たりは親近感。今の消費の中心層は若者で、民芸品に興味を持ち始めている。お正月用品の影響力が薄れたのではなく、それをどのように今の時代に合わせるかがカギ」との見方を示す。
どのように、新たな形を見付けるかは、決して簡単なことではない。
胡同と呼ばれる古い路地の街並みが残り、700年以上の歴史を誇る北京の「南鑼鼓巷」の商会会長?徐岩氏らは約6000万元(約10億2000万円)を投じて、南鑼鼓巷に無形文化遺産拠点基地を設置。泥人形工芸職人?姚暁静さん、鼻煙壺(嗅ぎたばこ入れ)の職人?高東昇さん、京劇で役者の顔に施す化粧法?臉譜の職人?趙永岐さんなど、無形文化遺産の継承人15人を無料でここに招いた。「政府からの一定の補助金ももらうだけで、なにか別の事をしようとする能力や気持ちがない無形文化遺産の継承人もいる。社会一般の力を利用して、匠の技を持つ高齢の職人と、若年化している市場をドッキングさせたい」と徐氏。「芸術が分からない庶民はいないが、庶民のことを理解していないアーティストはいる。数百年も続いてきた手工芸は、新たな活路を必要としている」。
「人民網日本語版」2016年2月22日